NEWS手越祐也という奇跡
2020年6月19日、私がオタクとして歩んできた中で一番の愛を注いだ人物が、17年間のアイドル活動に終止符を打った。
遡ること2010年1月。ドラマやバラエティを見る頻度が周りより低かった当時小学生の私が、唯一初回から欠かさずに見ていた番組が世界の果てまでイッテQだった。そんな私にとって、“初めて出会ったかっこいい芸能人”が手越祐也だった。月並みな表現だが、本当に「世の中にはこんなにかっこよくて王子様みたいな人がいるんだ」と思った。一目惚れだった。
その一目惚れした王子様は、生意気で、ナルシストで、でもなぜか、泥まみれになりながら必死に水牛を乗りこなしていた。誰よりも真っ直ぐで、負けず嫌いな彼に、私は恋をしたのだった。
そこからは早かった。私が仲良くしていたお友達には親絡みで応援している強火ジャニヲタが多く、交換ノートに「イッテQに出ている手越くんという人が気になっている」と一言を添えると、次に回ってきたときには雑誌の切り抜きが大量に挟まっていた。その当時ランドセルの連絡先が入れるための透明な部分に好きなジャニーズの切り抜きを入れるのが流行っていて、私もすぐに真似をした。見る度に心が躍ったのを覚えている。
3ヶ月後には親がNEWS担の女の子にまで話が回り、ありがたいことに直近に開催が決まっていた『続・テゴマスのあい』のチケットを取ってくれた。
それからコンサートまでは、TSUTAYAで借りたテゴマスの二枚のアルバムをMDに焼いて、毎日毎日、曲が飛ぶようになるまで聴いた。
そして、2010年7月31日。唯一持っていたピンク色のキャミソールを着て、親と一緒に国立代々木競技場第一体育館へ向かった。原宿駅に着くと、イッピ袋を持ったオタクで溢れ返っていて、軽いカルチャーショックを受けたこと。親はチケット代以外は出さないというスタンスだったので、大事なお小遣いを叩いて可愛いハート型のペンライトだけ購入した。
人生で初めてのライブは驚きでいっぱいだった。大音量で聴く生演奏は感動的で、ペンライトの白い光が綺麗で、その中心で美しいハーモニーを奏でるテゴマスの二人が、世界で一番輝いて見えた。
心がフワフワ浮いたまま、帰路につき電車を待っていると、前にそれぞれハート型の風船を抱えた二人組のお姉さんがいた。親に「あれ、上から降ってきたやつかな?いいなぁ。」などと話しかけながらボーッと眺めていると、一人のお姉さんが「私たち、二つゲットできたから一つもらってくれない?」と話しかけてくれたのだ。この時はまさか声をかけられるとは思ってもみなかったので、ただただ必死に頷くことしかできなかったのだが、今でも一部始終鮮明に覚えていることから、相当嬉しかったのだと思う。昔のコンサートを振り返る度にこの出来事も一緒に思い出して心がギュッとなる。
改めて、あの時のお姉さんたちに感謝を伝えたい。風船は萎んでしまったけど、今でも大切な宝物です。ありがとう。
1年半後に参戦したテゴマスのまほうで、もの言いたげな表情を浮かべながら『さくらガール』を歌う二人を見たあと、しばらくして、NEWSが6人から4人になった。それにつれて、手越くんは色んな意味で目立つようになっていったのだが、グループの中心となって3人を引っ張っていく姿はとても頼もしく、かっこよかった。4人になってからメンバー同士の絆もとても深まったように感じて、初めてグループに対して大きな愛情が芽生えた。
そんなこんなで、私は順調に盲目な手越担として成長していった。周りのジャニヲタ友達はどんどんJr.や他の若手グループに担降りしていく中で、ずっと手越祐也だけを一途に追い続けた。リアルタイムで色んなスキャンダルを経験して、その度に疲弊した。なんで手越担だけがこんなに辛い想いをしなければならないんだと思い悩むこともあった。正直、6〜7年目ぐらいからは、ある意味プライドで推していた部分も大きいと思う。
それでも、手越祐也の甘い言葉に、歌声に、メロメロにされて手のひらを返すのが辞められなかった。コンサートや出演番組は日々の生きる活力だった。あなたの前向きな言葉に沢山救われた。あなたがいるから頑張れることが沢山あった。
そして何より、コンサートで見せる表情が本当に、本当に、心から、大好きだった。
今まで多くの嘘で誤魔化されてきたが、あの笑顔が作られたものだとは、とても思えなかった。
今回彼が選んだ答えは、退社だった。私が恋をしたジャニーズ事務所所属のNEWS手越祐也はもういない。ずっと待っていたテゴマスも復活することなく終わってしまったし、四部作も完結させてくれなかった。ただただやるせなく、滞りを感じている。FC動画で語る3人の表情は、まともに見ていられないほど切ないものだった。
なぜ彼はここまで天狗になってしまったのか。なぜ今彼の周りにいるのが15年以上一緒に活動してきたメンバーではなく、外面だけは良いようなまだ出会って数年の見知らぬ大人たちなのか。なぜ一度立ち止まって、どんな時でも寄り添ってくれたメンバーとファンの声に耳を傾けるという一番簡単なことが最後までできなかったのか。考えると不満はいくらでも出てくる。こんな結末を迎えるなら、こんな気持ちになるなら好きにならなければよかったとさえ思う。
しかし何を言っても、みんなが愛したNEWSの手越祐也は、記録として残り続ける。CDを聴けば美しい歌声が流れるし、DVDを見れば誰よりも楽しそうに笑っている。
個人的に、過去に縋るのは悪いことではないと思う。それはその人が今を生きる為に必要なものだから。
この先彼がどんな道を歩むとしても、過去は変わらない。突如目の前に現れた王子様に、純粋に恋をしていた気持ちは本物だった。
亡霊にはなりたくないが、あの笑顔を、歌声を、NEWSの手越祐也という奇跡をずっと忘れずにいたい。
それでもやっぱり、あなたの天職は実業家でもなく、YouTuberでもなく、アイドルだったと思うよ。今までありがとう。おやすみなさい。